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『数学文章作法 基礎編』を読んだ

読書

名前に「入門」の文字がある専門書はとても多いですが、その分野に対する知識が無い場合、本当にその専門書のおかげで「入門」できることは少ないと感じています。


そもそも、0や0.5程度の知識を1や2にあげることが「入門」だとするなら、それは5の知識を7に上げるよりも難しいのでは無いかと思います。特に人より理解力が低い自分の場合は、余計にその最初の一歩というのが難しいのかもしれません。


そんな風に考えている私でも、この著者の「入門」は本当に「入門」できると感じて、著者買いしてしまうのが結城浩先生の書籍です。


例えばJavaが何とか書けるようになった時、「リファクタリング?何語?デザインパターン?それってプログラム関係の用語?」という状態で買った『Java言語で学ぶリファクタリング入門』や『増補改訂版Java言語で学ぶデザインパターン入門』は、プログラム素人の自分でも一気に読み切ることができて、読む前と後で自分で見てわかるくらいにプログラムの質が変わったと思ういますし、何より他のプログラマの人が言っていること、書籍で書かれていることが理解できるようになったことからも、これらの書籍で「入門」できたと言えると思います。



SSOなど認証認可のプロジェクトを控えていたことがありました、新卒時の情報処理試験以来「暗号化」なるものをすっかり忘れていた時だったので、無理矢理に技術検証や勉強をしていくも、理解が進まないと困っていたことがありました。遠回りでも基礎からやり直そうと考えていた時に見つけてきて読んだ『新版暗号技術入門 秘密の国のアリス』も「入門」に役立ったと思います。「入門」ができていることで応用ができるようになり、どこにも書いてないことでも自分で仮説を立てて検証して進めていくことができるようになりました。
 

これらの書籍を読んでいる時に感じたのは、まるでキレイなプログラムを読んでいるかの如くの論理性でした。複雑なことを説明しているのですが、それを素人でも理解可能な部品にかみ砕いて、論理立てて並べることで最終的に大きなことの理解にたどり着くような内容でした。



頭の中では論理的に組み立て(たはず)、その考えを文書に落とし、資料が完成。後から印刷して客観的に読んでみたら良くわからない文章に。。。ということが自分の場合はよくあります。


しかし、結城先生の文書は論理的な考えがそのまま文書に落とし込まれているのか、あまり考えずに流して読んでいても理解が途切れることがありません。難しい内容でも個別のポイントを論理的に積み上げることで、ここまでわかりやすくなるのかと感じます。
 

そんな結城先生の文章の書き方、ノウハウが書かれているだろう『数学文章作法 基礎編』という書籍のタイトルから即決で購入しました。





書籍の中では、「読者のことを考える」という原則に沿って、それぞれの項目が読者が視点でどうなのかが徹底して繰り返されています。 
 

私が印象的だったのは「神は細部に宿る」の言葉と共に書かれている以下の文章です。

文章を書く人(著者)は、文章の形式を意識する必要があります。
一般の人が文章を読むときには、内容ばかりに目を向け、形式はあまり意識しません。
しかし、著者が文章を書くときには、内容だけではなく形式も意識する必要があります。

 
  
ひらがなの使い方、数字の使い方、段落構成、例示、目次の構成などなどの個別の「細部」の説明がありますが、そのどれもに意味があることがわかります。
 
 

これらの内容は当然本書内の文章にも反映されています。説明を読みながら意識して本書を読むと、たしかに上記の文書の通り自分(読者)は内容ばかりに目を向けて、細部である形式なんて考えないこと。そして意識してないにも関わらずこの細部である形式のおかげで、読者として文書から得られるものが大きくなることが実感として感じられました。



目次は以下の通りで、4章だけが若干、数学の文書向けの話になっていますが、それ以外は数学以外の文書にも当てはまる内容ばかりだと思いました。

構成としても1章、2章くらいまで読めば後はどの章から読んでもスムーズに理解できるようになっています。

第1章 読者
第2章 基本
第3章 順序と階層
第4章 数式と命題
第5章 例
第6章 問いと答え
第7章 目次と索引
第8章 たったひとつの伝えたいこと

 
 
 
文章を書くとき、構成や書き方、言葉遣いなど著者は絶え間なく判断をする必要があり、その原則は「読者のことを考える」ということ。読者のことを考えるなら、内容だけではなく、内容を読者に伝えるために気を配るべき項目がある。それぞれの項目に関して、改善ポイントや指針とその理由がわかりやすく書かれています。

いきなりここに書いてあることを自分の書く文章全体を通して実践し、行き渡らせるのは難しいかもしれないです。でも、一つ一つ身につけてにつけていきたい内容です。

章の構成がキレイなので、文章を書いている時に逆引きしても使える書籍だと思います。



数学文章作法 基礎編 ちくま学芸文庫

数学文章作法 基礎編 ちくま学芸文庫